呼吸器外科では、原発性肺癌・転移性肺腫瘍・気胸・縦隔腫瘍・胸壁腫瘍・外傷(血気胸・肺損傷等)などを手術で治療しています。
主な疾患についての詳細を下記の「診療内容」・「対象疾患」に記載しております。
悪性腫瘍につきましては大阪府がん診療拠点病院として、呼吸器内科・呼吸器外科・放射線診断科・病理診断科が連携し、効率的で専門化された治療を行っています。
三島地区における呼吸器領域の急患(気胸・膿胸・胸部外傷など)に関しましても救急科の開始によって、急患の受け入れがこれまで以上にスムーズに行える体制になり適切で適時的な治療を行っています。
胸腔鏡下手術について
図1のように胸部に3~4か所の小さな切開(約1~2cm)を行います。そこから胸腔鏡という棒状のスコープや各種手術器具を胸腔内に挿入して手術します。
図2のように胸腔内の映像はモニター(テレビ画面)に映し出されます。このモニターを見ながら手術を行いますが、胸腔内を目で直接見るよりもとても大きく映るので細かいところ(細い血管など)まで鮮明に識別することができます。この方法で肺癌や縦隔腫瘍・気胸など多くの手術を行っています。
皮膚や筋肉を大きく切開する開胸手術(図1・左)と異なり、胸腔鏡手術は創部が小さいので痛みや手術による侵襲も小さくなります。
呼吸器外科の主な疾患と手術
肺癌
I期・II期と一部のIII期が手術適応となります。根治性から主に肺葉切除を胸腔鏡手術で行います。
肺は右は3つ(3葉)に分割され、左は2つ(2葉)に分割されて胸腔内に入っています。術前に肺癌と確定診断された手術は、主にこのうち該当する1つ(肺葉切除)とリンパ節を切除します。最後に切除した肺を取り出すために創部を少し大きくします(およそ3~6cm)。切除した肺やリンパ節を、術後に病理診断して病期(ステージ)が判定されます。
上記の肺葉切除ができる体力がない方には、術後の肺の機能を保持する目的で肺の切除量を少なくした手術(区域切除、部分切除)を選択することも可能です。一方、体力的に手術が可能と判断されれば80歳以上の高齢者の方でも肺葉切除を行っていますが、そのほとんどの方は手術後もふつうに運動や日常生活をされています。
もう少し詳しく説明します。
近年、早期の肺癌であっても手術前から「循環器系の疾患:狭心症・弁膜症・不整脈・脳梗塞など」や「呼吸器系の疾患:肺気腫・間質性肺炎など」および「両者の疾患」を有する症例が増加しています。肺癌手術の際にこれらの合併症は重篤化することがあります。そのため、手術前から上記合併症対策をしっかり行う必要があります。具体的な対処方法として
1)手術前に外来で心臓エコーや負荷心電図などを施行し、隠れている弁膜症や心不全・狭心症などを見逃さないように発見し重症度の評価を行います。これらの疑いがある場合は循環器内科で必要な精査や治療を行ってから手術を行うので手術時の危険性が減少します。また、手術前から狭心症や脳梗塞のため抗血小板薬(バイアスピリンなど)を内服中の症例では、手術の際に発作や悪化することを回避する目的で抗血小板薬を中止せずに継続したまま肺癌手術を施行しています。
2)術前から呼吸機能が低下している場合は外来受診の時点から吸入薬治療を開始するとともに、呼吸リハビリの重要性を十分に理解してもらい呼吸トレーニングを開始します。また、入院を早めて、術前から痰の喀出訓練や離床・起居動作を含む呼吸リハビリをしっかりと行っています。そして、手術の翌日から呼吸リハビリを開始します。
転移性肺腫瘍や良性肺腫瘍
大腸がん・腎細胞がん・乳がん・子宮がんなど肺以外の臓器の悪性腫瘍が、肺に転移したものを転移性肺腫瘍といいます。胸腔鏡を用い肺をできるだけ温存するために、その多くは部分切除や区域切除を行っていますが、腫瘍の状況や適応によっては葉切除を行うこともあります。
縦隔腫瘍手術
あまりなじみのない名前ですが、「縦隔(じゅうかく)」とは胸部の中で脊椎・左右の肺・横隔膜などで囲まれた場所です。ここには気管、胸腺、リンパ節、神経節、心臓・大血管、食道などの臓器が存在しています。「縦隔腫瘍」とはこの縦隔という場所に発生した腫瘍の総称です。 ここには良性・悪性を含め様々な腫瘍ができます。慣例上、心臓・大血管・食道に発生した腫瘍は含めません。主な縦隔腫瘍として胸腺腫、神経原性腫瘍、先天性嚢胞、胚細胞性腫瘍などがあります。縦隔腫瘍の多くは胸腔鏡手術で切除しています。しかし、悪性腫瘍で完全切除が必要と判断された場合は前述の開胸手術や胸骨正中切開(胸の中央を縦に切開し胸骨も縦に切開)により腫瘍切除を行うことがあります。
気胸手術
気胸の方がすべて手術になるわけではありません。気胸の再発例や胸腔ドレナージで改善しない場合に手術となることが多いです。 通常は胸腔鏡手術で気胸の原因となった肺嚢胞を自動縫合器で切除します。
※手術適応や手術方法については患者様や御家族とよく相談し検討したうえで最も適切なものを選択しています。また、胸腔鏡手術では危険があると判断したときは手術の途中で開胸手術に変更することがあります。
最後に、重要なことは手術の安全性です。
これからも安全性の高い胸腔鏡手術を行っていきたいと考えています。
呼吸器外科手術では、「手術侵襲の軽減(胸腔鏡手術と区域切除・部分切除などの縮小手術)」・リハビリスタッフ・看護師・薬剤師・栄養科・医師のチームによる「包括的なリハビリ」・「早期経口摂取と早期離床」を促進して術後ADLを早期に改善する必要があります。目的は、良好なADLを維持した直接自宅への退院です。
通常の肺癌手術は大手術ではありません。これらの方法によって80歳以上の御高齢の手術であっても、ほとんどの方が退院後は普通の日常生活や運動を行っています。
外来受診時には、これらの説明を絵図や写真を用いて御家族様にも詳しく行っています。
2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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肺悪性腫瘍手術 | 42 | 34 | 45 |
自然気胸 | 14 | 36 | 33 |
巨大肺嚢胞 | 1 | 1 | - |
血胸 | 2 | 1 | - |
外傷性血胸 | 1 | - | - |
縦隔腫瘍 | 6 | 4 | 5 |
胸壁腫瘍 | 1 | - | - |
肺良性腫瘍 | - | 1 | 6 |
横隔膜弛緩症 | - | - | 1 |
膿胸 | 2 | 3 | 8 |
胸腔鏡下生検 | 1 | 5 | - |
外傷 | 1 | 1 | 3 |
その他 | 1 | 7 | 7 |
合計 | 75 | 88 | 107 |
氏名 | 椎名 祥隆 |
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役職 | 主任部長 |
資格 | 日本外科学会専門医 |
氏名 | 金 泰雄 |
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役職 | 医長 |
資格 | 日本外科学会専門医 |
氏名 | 櫻井 真倫 |
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役職 | 専攻医 |
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