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臨床研究センター

臨床研究センターのご紹介
臨床研究センターは基礎的な医学研究成果を出し、さらにそれらを実際の医療に役立てるための懸け橋となる研究を医学の各分野にて進めています。
また、質の高い臨床研究・試験を実施・支援する体制の整備も行っています。

組織体制

研究室一覧


医療の質研究室 

研究員紹介
氏 名   業 績 
室 長:筒泉 貴彦 researchmap
研究員:石丸 直人 researchmap
研究員:恒光 綾子 researchmap

研究の概要
医療の日進月歩の進歩により、専門性の高い薬剤や治療法が日々紹介されています。その一方で高齢社会、複数の併存疾患、老々介護や核家族化、引きこもりなどの要因に伴う家族環境の変化、医療過誤など、患者の状況および環境も刻一刻と変わっており、単独の臓器や疾病だけに主眼をおいた科学として医学を追求するだけでは患者の満足に直結しないことも多くなってきています。
医療の質研究室では新しい薬の発見や治療法の開発はそれぞれの専門家にお任せし、いかにして現在あるリソースを用いてより良い医療を提供できるかを考えていきます。
内容が抽象的ですので具体的な例を以下にあげています。

1.総合内科の現行の医療における介入
専門医と連携しながら種々の病態を見ることができる入院診療のプロである総合内科(ホスピタリスト)の介入により医療経済、および医療の質にどのような影響を与えうるかを評価します。
具体例としては手技や高度な専門性を必要としない疾病・病態を入院診療のスペシャリストとして総合内科が対応することによる医療の質の向上および再入院率の低下を示すことが挙げられます。こちらについては最近、誤嚥性肺炎をテーマとして研究が論文としてアクセプトされています。
現在取り組んでいるプロジェクトとしては脊椎圧迫骨折および大腿骨近位部骨折症例の診療を主科として対応することです。通例は整形外科が主科として対応することが多いのですが近年の患者の高齢化もあり、骨折以外の病態が入院中において大きな問題を呈することが増えています。手術やコルセット作成は整形外科に依頼して、それ以外の評価およびマネージメントを総合内科が行うことによる入院診療の質の向上および再入院率、入院中のADLの維持あるいは向上をもたらすことができるかを現在臨床研究にて調査中です。

2.診療看護師(ナースプラクティショナー)による高齢診療における役割
医師および看護師の側面を持つ診療看護師ナースプラクティショナーが介入することで医師不足になりがちな亜急性期・慢性期病床においてどのような影響を与えうるか評価します。まだ診療看護師という職業は本邦において浸透していないのが実情ですが海外では50年以上の歴史があります。医師の監督下という条件下ではありますが診療の多くを行うことができ、それによる医師の労働時間の削減、および看護師としての側面を活用し患者への診療の質の向上に寄与できることが期待されています。現在総合内科に所属している診療看護師は高槻病院において急性期病態を脱した患者様の担当をさせていただいており、より包括的なケアを行えるようにしています。

3.入院に伴う合併症を減らすための取り組み
入院中の転倒、消化管出血など入院してしまったことによる合併症(Hazard of hospitalization)を減らすための介入について研究します。

4.入院された高齢患者に対するアドバンスケアプラニング(望まれる医療)についての面談が与えるインパクト
高齢患者に対して退院前に今後起こりうる疾病に対してどのような加療を希望されるかをあらかじめ話し合う面談がどのような影響を与えるか検討します。

5.24時間利用可能な往診サービスが与えうる在宅医療の質の向上
在宅医、特に個人で診療されている医師の疲弊を防止するためにオンコールサービスを導入することで診療の質を維持することができるかどうかを検討します。現在総合内科では訪問診療及び往診業務にも従事しており、その診療に対する研究を展開していく予定です。

研究課題一覧

医工学研究室

研究員紹介
氏 名   業 績 
室 長:平中 崇文 researchmap
研究員:岡本 剛治 researchmap
研究員:藤代 高明 論文  発表 

研究の概要
近年の医療技術の目覚ましい発展と、高度な医療機器は深いかかわりを持っています。臨床の場で生じる様々な問題に対して、他者の解決を待つのでなく、現場が主導して解決法を見つけていく必要性が益々高まっています。このためには、臨床の最前線にある病院が研究室を持ち、日々生じる問題課題の解決法を自ら探し出してゆくことは大変意義深いことです。
医工学研究室はまさにこのような目的のために設立されました。当研究室で行う活動はすぐに臨床の現場で役立つ、いわゆる即戦力の研究ばかりです。この研究を高い技術を持つ企業と共同して行うことは、医療レベルの向上のみならず我が国の経済の活性化にもつながるため、大変意義があるといえます。
高槻病院医工学研究室の主な活動は以下の通りです。

1.生体工学の研究
医工学研究室では、先進の技術や器具を用いた研究、また技術や器具そのものの開発を行っています。研究対象は生体力学・生理学、医療器具の開発・改良、再生医療等として、診療科の枠を超え、問題解決型の研究を主に行っています。

2.医工連携の推進
様々な企業が持つ高い技術を臨床の場で役立てるよう、医工連携を行っています。その分野はインプラントや人工臓器などの生体材料をはじめとして、診断・治療機器、映像・情報機器、さらには再生医療と多岐にわたります。それぞれの分野において高い技術、ノウハウを持つ企業と提携しています。

3.日本の技術を世界の医療現場に
医療機器分野において、海外企業製品のシェアは約7割といわれています。医療分野は今後とも発展が見込まれる有望な市場であるため、優れた製品を国内企業とともに開発して日本国内における国産製品のシェアを獲得することで、医療レベルの向上のみならず我が国の経済の活性化も促します。
さらに高槻病院医工学研究室では、世界に通用する技術・製品を開発して発信することも目的としています。


研究課題一覧

研究室 取組み一覧(PDF)


病態代謝研究室

研究員紹介
氏 名 業 績
室 長:伊倉 義弘 researchmap
研究員:大久保 貴子 researchmap
研究員:柴田 貴司 researchmap

研究の概要
病態代謝研究室では、室長・伊倉、室員・大久保、室員・柴田の3名が、主に消化器疾患の病態解明~新規治療法の確立を目指し、日常診療の傍、以下の研究テーマに精力的に取り組んでいます。

1.非アルコール性脂肪性肝疾患の成り立ち・病態・予後に関する病理学的・臨床病理学的研究
メタボリックシンドロームの蔓延により、肝細胞の脂肪化を基盤とした肝障害が増えつつあり、今や先進工業国においては、肝硬変をもたらす最大の原因であると認識されています。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と言いますが、その成り立ちや増悪因子、そして生命予後を左右する肝硬変や肝癌への進展に関しては、未だ不明のままです。当研究室では、NAFLD症例の病理標本及び臨床情報のレビューにより、その病理進展メカニズムを明らかにしてきています。脂肪肝はごくありふれた病変であるため、その中から本当に危険な脂肪肝を特定する手段の確立を当面の目標にしています。一部は科学研究費補助金助成対象となっており、現在までに多くの国内外の学会(日本肝臓学会、日本消化器病学会、日本病理学会、米国肝臓病学会、欧州肝臓学会)や医学雑誌上(Hepatology; World J Hepatol; Dig Dis; J Diabetes; Int J Clin Exp Pathol; Int J Cancerなど)で成果を公表しています。

2.慢性肝疾患における血小板減少の意義について:抗血小板薬投与による治療の可能性
肝硬変に進展すると末梢血中の血小板は減少し、出血傾向となると理解されています。理由は多岐にわたりますが、我々は病肝局所などでの血小板消費の亢進が、要因の一つとして影響をおよぼしていることを明らかにしてきました(Am J Med Sci 2013;消化器内科2013)。この一連の研究で得られた知見から、抗血小板薬で過剰な凝固反応を抑制することにより、血小板数の回復が期待できるのではないかと考え、目下、仮説を検証すべく、所見の蓄積を進めています。得られたデータは一部、国内外の学会(日本肝臓学会、米国肝臓病学会、アジア太平洋肝臓学会)や医学雑誌上(Int J Clin Exp Med 2017)に公表しています。抗血小板薬、特に低容量アスピリンは、肝線維化の進展を遅らせ、肝癌発生抑制に期待が持たれており、2018には米国の医療メディアでも取り上げられました(Gastroenterology & Endoscopy News 2018)。将来的にNAFLDを標的とした低容量アスピリン投与の前向き試験を実施すべく、現在検討中です。

3.乳癌生検組織におけるリンパ管侵襲検出の予後因子としての意義について
癌のリンパ管侵襲を病理組織学的に評価することは、悪性度及び予後を推定する上で極めて重要です。乳癌については、腋窩リンパ節転移の有無以外に適当な予後指標はなく、リンパ管侵襲を精度高く検出することは、治療方針決定の上で非常に重要と考えられます。ところがリンパ管内皮マーカーであるD2-40は、筋上皮細胞も陽性を呈するため、リンパ管侵襲なのか乳管内進展なのか、その判別にはプラスαの所見が必要です。本研究の目的は、確実な判別方法を確立することです。既に第113回日本病理学会総会(2024)において、研究成果の一部を報告(大久保ほか;乳癌組織におけるリンパ管侵襲と乳管内進展との免疫組織化学的鑑別法)しています。

4.帝王切開施行数抑制への臨床的及び臨床病理学的研究
帝王切開による分娩数は母体への弊害が多く、その数を減らすことは周産期領域での大きな課題となっています。母児に不利益を与えることなく、不要な帝王切開を避けるための治療方針を策定することを目的に、臨床的・臨床病理学的研究を行っています。これまでにThe Journal of Obstetrics and Gynaecology Research (日本産婦人科学会英文誌)をはじめ、複数の学術誌に多くの関連論文を公表してきています。


研究課題一覧


成育医療研究室

研究員紹介
氏名 業 績
室 長:片山 義規 researchmap
研究員:長坂 美和子 researchmap
研究員:谷内 昇一郎 researchmap

研究の概要
高槻病院は総合周産期母子医療センターの指定を受け、早産児や重篤な病気を持った新生児に高度な医療を提供し、地域の周産期医療システムの中核となる役割を担っており、年間約500名の新生児に入院診療を行っています。また産科及び院内助産センターでは年間約1,200名の出産を取り扱っており、BFH(Baby Friendly Hospital) 認定病院として母子同室にて母乳育児の推進に努めています。また小児病棟・PICUでは年間約2,000名の入院患児を診療し、外来では年間約30,000名を対象に一般診療、専門外来(アレルギー・循環器・神経・代謝等)、乳児健診、在宅外来、予防接種等を行っています。
社会医療法人の認定を受け、小児救急診療にも積極的に取り組んでいます。当院における新生児および小児診療の記録を後方視的に見直す観察研究や、お子様に負担の無い範囲で行われる前向き研究は、現在入院中の新生児、小児に対する診療レベルの向上や今後診療の対象となる新生児、小児の生命予後の改善、合併症の軽減につながり、健全な成長発達に寄与するものと考えます。また学会発表や論文作成により、研究で得られた新たな知見を公表することは、各種の指定を受けた病院としての社会的責任とも考えられます。
以上の方針に沿って、成育医療研究室では様々な臨床研究の発案や遂行業務を統括しています。

研究課題一覧

器官発達学研究室

研究員紹介
氏 名 業 績
室 長:原田 敦子 researchmap
研究員:土居 ゆみ researchmap

研究の概要
当研究室は小児脳神経外科の原田敦子(室長)と小児麻酔科医の土居ゆみで構成されています。発達段階にある小児を対象に外科、または手術や麻酔に関する観点から研究を行います。現在行っている研究テーマについて概説します。

1.乳幼児の頭蓋変形の調査
赤ちゃんの頭の形への関心の高まりから、向き癖による頭蓋変形(頭位性斜頭・短頭)に対して、頭蓋形状誘導療法(ヘルメット治療)が欧米では普及しております。当院では2015年からヘルメット治療を開始し、2024年4月までに700例以上の赤ちゃんに対してヘルメット治療を行ってきました。昨年は日本人特有の絶壁頭(頭位性短頭)についての論文が英語の学術誌に掲載されました。
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2.全身麻酔を必要とする小児が受ける身体的・心理的負担が及ぼす影響
成人では麻酔なし、あるいは局部麻酔などで行える手術・検査であっても子どもには全身麻酔が必要なことがあります。子どもは子どもなりに手術や検査を受けるにあたり年齢相応の身体的・心理的負担があります。全身麻酔や周術期のストレスが小児の身体やその後の発達におよぼす影響を調査し、それらを軽減させるための因子を検討します。

3.検査のため全身麻酔を受ける小児の気道に麻酔薬が及ぼす影響
検査のために安静や不動化が必要な際、小児の場合、多くは鎮静剤や麻酔薬の投与を受けます。鎮静には様々なレベルがあり、それらは一連のものとされており、鎮静は容易に全身麻酔へと移行し、気道の開通性は危うくなりえます。安全に気道を維持し、確実で質の高い検査を行うための最適な方法を分析します。

4.二分脊椎症患者の実態調査
脊髄髄膜瘤、潜在性二分脊椎症(脊髄脂肪腫など)の患者さまの診断、治療、その後の経過について調査し、二分脊椎症の治療効果、予後について検証します。当院に通院中の二分脊椎の患者さまには、匿名という形でデータを提供していただいています。
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5.グリオーマにおける化学療法感受性の遺伝子指標の検索とそれに基づくテーラーメード治療法の開発
原発性脳腫瘍で一番頻度の高いグリオーマ(神経膠腫)に対する治療は、近年腫瘍細胞の遺伝子型によって、テーラーメードで行われるようになってきています。大阪医療センター金村米博先生が中心となり、関西地区の脳腫瘍の遺伝子解析が行われており、当院もこの研究に参加しています。患者さまの同意が得られた場合、金村先生の元に腫瘍組織を送り、腫瘍の遺伝子解析をしていただくことにより、化学療法の薬剤の決定や予後予測が可能となっています。

6.iPS細胞の分化パターンによる頭蓋縫合早期癒合症の分類と病態メカニズム解明
頭蓋骨縫合早期癒合症は頭蓋骨を連結する縫合が早期に癒合する疾患で、頭蓋の変形や狭小化を引き起こします。20%程度は責任遺伝子がわかっていますが、残りの80%はまだ原因が解明されておりません。今回東京医科歯科大学歯学部分子発生学分野でiPS細胞を用いた頭蓋骨縫合早期癒合症の原因解明の研究が行われることになり、当院もその研究に参加することになりました。具体的には頭蓋骨縫合早期癒合症の患者さまの手術時に切り取った骨をサンプルとして提供し、解析します。また、正常のサンプルも必要なため、頭蓋骨縫合早期癒合症以外の開頭術の際に切り取った骨の一部をご提供いただくことがあります。

7.小児水頭症に対する脳室腹腔(VP)シャントの治療効果の評価
小児水頭症に対するシャント治療の全国規模の調査が脳神経外科学会、小児神経外科学会主導で2019年より行われることになりました。当院小児脳神経外科もこの調査への参加依頼をいただきましたので、倫理委員会の承認を得て、参加することになりました。当院で2019年7月以降にVPシャントを新規に行う患者さまで、研究への参加の同意が得られた患者さまが対象となり、シャントの種類、水頭症の原因、画像所見、手術方法、合併症などの情報を提供します。

8.頭蓋骨縫合早期癒合症術後の頭蓋形状誘導療法(ヘルメット治療)についての後方視的検討
頭蓋骨縫合早期癒合症の治療には、頭蓋形成術や頭蓋骨延長法などが行われてきましたが、いずれも生後6カ月以上で手術を行います。近年赤ちゃんの頭の形への関心の高まりから頭蓋骨縫合早期癒合症が乳児期早期に診断されるようになりました。今までは乳児期早期に発見されても、6か月になるまで治療を待つことが多かったのですが、当科では6か月以前の赤ちゃんに対して内視鏡下縫合切除術を行った後、ヘルメットを装着するという低侵襲の治療を開始しました。この治療法は日本では限られた施設でしか行われていないため、2015年からの当科での治療成績をまとめたいと考えています。
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9.頭蓋骨縫合早期癒合症手術における輸血回避の因子についての検討

頭蓋骨縫合早期癒合症の手術では、50-100%で輸血を要するとされています。輸血に関しては感染症やアレルギー反応などの問題から、小さなお子様では特に回避すべきですので、当院では輸血を回避するための取り組みを行っております。術前1か月前から鉄剤を内服したり、10kg以上の児では術直前の自己血採取や術中に出血した血液を回収して体に戻す装置を用いたりします。上記の取り組みのうちどの項目が輸血回避の因子になっているのか解析し、輸血率をさらに下げていきたいと考えています。
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10.小児手術の希釈式自己血輸血において貯血に要する時間に影響を与える因子についての後方視的検討
子どもの手術で輸血を回避することは、輸血関連副作用のリスクを軽減する点で重要です。小さな子どもでは術前に自己血貯血をすることは困難であり、当院では手術の直前に貯血をする、希釈式自己血輸血を行うことで輸血を回避する工夫をしています。しかし、血管が細い子どもでは採血をするのにも時間を要するため、時間短縮のためには採血の方法に工夫が必要です。どのような方法が最も有効に血液を採取できるのか、これまでの採血方法から検討します。
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11.小児頭部外傷患者に関する調査
当院には年間500名前後の頭部外傷の子どもさんが受診されます。ほとんどのお子さんが軽症ですが、時に重症で手術を要する場合もあります。適切な診断、治療に結び付けることを目的として、頭部外傷の受傷機転、症状、画像検査などを調査することとしました。
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12.小児頭蓋内悪性腫瘍の遺伝子診断体制の構築
近年、がんにおける遺伝子異常の解明は、がんの診断・治療を根本的に変える可能性があることが最近の多くの研究により明らかになってきています。がんの遺伝子異常の全体像を明らかにしていくことにより、将来的には有効な治療法を選択するための指標を示すなど臨床的に重要な意義があるだけでなく、更にその情報が基盤となり新しい治療法の開発に結びつく可能性があると期待されています。小児脳腫瘍においても遺伝子診断は、近い将来、実際の臨床現場に導入され、病型診断やその後の治療法選択に使用されると予測されています。しかしながら、小児脳腫瘍は稀少な疾患であり、1つの施設だけでは十分な試料を確保し、その遺伝子診断体制を構築するのが困難ですので、遺伝子診断法や新たに開発される分子標的治療薬を導入するためにも、国内での症例の集積と、その遺伝子診断を実施する体制を構築する必要が有ると考えられます。そこで、国内で小児脳腫瘍の臨床と研究に携る2つの学会(日本脳腫瘍学会、日本小児神経外科学会)が中心となって、全国レベルでの多施設共同研究体を組織して、小児脳腫瘍試料を収集し、その遺伝子診断を行う体制を構築する研究を実施することになり、当院もその研究に参加することになりました。

13.乳児硬膜下血腫(急性、慢性)の受傷機転についての多施設共同研究
怪我をしたときや、出血しやすくなるような病気にかかったときは脳を包む硬膜と呼ばれる膜の下に血液がたまる硬膜下血腫と呼ばれる状態になることがあります。大人の場合硬膜下血腫が発生する状況はよくわかっていますが、小さなお子さん、特に2歳以下のお子さんの場合はどういう怪我やどういう病気になると硬膜下血腫が発生するのかは未だによくわかっていません。日本においては、これまで乳児期の硬膜下血腫を広い範囲で調査した報告はなく、怪我が生じた原因についてはさまざまな意見が交わされている状況です。この研究では乳児硬膜下血腫がどのように受傷して発症したのかを複数の施設で調査を行い、同年代で他の頭部外傷を負った患者さまたちと比べ、日本における乳児硬膜下血腫の実態および受傷機転を明らかにして、より多くの患者さまたちの診療に役立たせていただこうと考えています。対象となるのは、小児脳神経外科外来、小児科外来、救急外来を受診された4歳以下の頭部外傷の患者さまです。2022年,2023年に3つの英語論文が掲載されました。
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14.胎児MRIにおける脊髄髄膜瘤の高位診断法の開発と有用性の検証
本研究は脊髄髄膜瘤の患児の身体所見や検査所見(胎児MRIや出生後画像など)、手術などを後方視的に検討し、胎児MRIにおける脊髄髄膜瘤の高位診断の正確性を検証するのが目的です。
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15.小児脳神経外科疾患における遺伝学的検査の意義
小児脳神経外科は先天奇形(水頭症、二分脊椎症、頭蓋骨縫合早期癒合症、くも膜嚢胞など)から血管障害(モヤモヤ病、脳動静脈奇形、海綿状血管腫など)、外傷、腫瘍まで幅広い診療を行う診療科です。先天奇形は遺伝的素因が関与していることが多いですが、小児においては、先天奇形だけでなく血管障害や腫瘍においても遺伝的素因が関与していることがあります。遺伝性疾患が疑われる患者さまにおいては、遺伝学的に確定診断されることにより、治療方針、特に手術適応や術式の決定の助けとなることがあります。今回、当院もしくは他院で行われた遺伝学的検査結果が実際の診療にどのような影響を及ぼしたかを調査します。この調査結果を遺伝が関与すると予想される患者さまたちの診療に役立てていきたいと考えています
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16.大規模データベースを用いた頭蓋骨縫合早期癒合症の日本における実態調査
頭蓋骨縫合早期癒合症は稀な病態のため、これまでに国内の頭蓋骨縫合早期癒合症に関して、大規模かつ横断的に行われた調査は存在しません。東京都立小児総合医療センター形成外科が中心になって、手術症例をオンライン上に構築された専用のデータベースに登録することになりました。国内の症例の情報を大規模調査することで、疫学的なデータベースを構築します。また、構築されたデータベースをもとに、治療経過に影響を及ぼしうる因子や手術の合併症、神経学的発達予後についても調査を行います。2021年9月1日以降に初回手術を受けられた患者様が対象です。
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17.小児脳神経外科領域の胎児診断症例の後ろ向き調査
小児脳神経外科で扱う疾患は胎児期に診断されることがあります。胎児期に中枢神経疾患を指摘された場合、胎児の診断、予後を正確にカウンセリングすることが求められます。しかし、中枢神経疾患は多岐にわたり、確定診断が困難なことも多いです。そこで、胎児期に中枢神経異常を指摘された胎児の診断、予後を調査することになりました。201241日以降に小児脳神経外科を受診した妊婦さんと胎児の赤ちゃんが対象です。

研究課題一覧

腎臓疾患研究室

研究員紹介
氏 名 業 績
室 長:吉川 徳茂 researchmap
研究員:石森 真吾 researchmap
研究員:石河 慎也 researchmap

研究の概要
1.小児IgA腎症の治療法開発
小児腎疾患の中で、IgA腎症は最も多い慢性腎炎であり腎不全の主要原因である。IgA腎症はIgA免疫複合体が糸球体に沈着した結果、糸球体の慢性炎症が惹起され、糸球体内皮細胞・メサンギウム細胞増殖が起こり、糸球体線維化・腎機能障害に至る。IgA腎症は糸球体の慢性炎症により進行する。現在根治的な治療法のないIgA腎症の治療法を開発する。

2.小児IgA腎症尿中マーカーの開発
現在IgA腎症の診断には腎生検による病理組織学的診断を待たなければならず、より非侵襲的で疾患特異的なバイオマーカーが求められている。尿は非侵襲的に採取できることから、尿バイオマーカーを用いたIgA腎症の診断や病勢の予想ができると臨床的に非常に有用である。尿バイオマーカーを用いてIgA腎症を非侵襲的に診断する方法を開発する。

3.先天性腎尿路異常における慢性腎臓病進行とレニンアンギオテンシン系の関連の検討
先天性腎尿路異常は小児における慢性腎臓病のうち最多を占めるが、その進展機序は未だに不明である。近年になって「慢性腎臓病進展の病態におけるレニンアンギオテンシン系の関与」が報告されたが、慢性腎臓病進展機序の未解明な先天性腎尿路異常とレニンアンギオテンシン系による腎間質障害との関連についてはこれまで一切検討がなされていない。残存腎組織の特殊染色及び尿中バイオマーカーにより、尿中バイオマーカーにより、「潜在性のレニンアンギオテンシン系亢進」を証明することで、先天性腎尿路異常の慢性腎臓病進展機序解明を行う。

4.小児ネフローゼ症候群におけるワクチン接種を含めた免疫学的イベントとネフローゼ再発との関連研究
小児特発性ネフローゼ症候群の原因はいまだ不明であるが、上気道ウイルス感染症や様々なワクチン接種などがネフローゼ再発の誘因となる。しかし、小児ネフローゼ症候群患者における各種ワクチン接種や手術(麻酔など)のイベントとネフローゼ再発に着目した検討は少ない。日本国内における多施設共同研究として、研究期間内に小児特発性ネフローゼ症候群と診断された患者に対し各種ワクチン接種や手術(麻酔など)のイベントがネフローゼ再発に及ぼす影響を前方視的にて検討する。

5.低身長小児における慢性腎臓病とバイオマーカー研究
低身長小児のうち、一部では最終身長を獲得するまでの期間に慢性腎臓病(CKD)を発症する例を経験する。catch up growthなどの関連が示唆されているが、その病態は明らかになっていない。本研究では、低身長となる各種背景や治療介入による腎症状への影響、ならびに関連するバイオマーカーを検討することで、CKD進展のリスク因子の同定や早期介入につながることが期待される。

研究課題一覧


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