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肺がん

肺がんとは

肺は呼吸することによって肺に吸い込まれた空気がガス交換をする臓器です。口や鼻から吸った空気は気管、さらには気管支を通って肺に入ります。さらに気管支が分岐を繰り返して肺胞という小さな袋で、血液中の二酸化炭素と空気中の酸素を交換しています。肺がんは肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんは進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。

▲胸部の解剖図(模式図)

肺がんは喫煙との関係が非常に深いがんですが、タバコを吸わない方でも発症することがあります。周囲に流れるタバコの煙を吸う受動喫煙により発症リスクが高まることもわかっています。

※以上、出典:国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス「肺がん」より

わが国でのがんによる死亡原因の第1位は胃がんですが、男性では平成5年以降肺がんが最も多くなっています。肺がんと診断される人は年間約5万人で、そのうち80%にあたる約4万人が亡くなられています。肺がんによる死亡者数はこの40年間に約12倍増加しており、2021年 には
7万人を越えると予測されています。この傾向は喫煙男性(扁平上皮がんと小細胞がんが多い)だけではなく、非喫煙女性(腺がんが多い)でも同様で、 とくに70歳以上で増加しています。

肺がんの主な病理組織型には扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類があります。
小細胞がん以外をまとめて非小細胞がんと呼ぶこともあります。このように小細胞がんと非小細胞がんに分けるのは治療方法に違いがあるからです。

肺がんはその発生部位により、比較的太い気管支付近に発生する中心型(肺門型)と細い気管支付近に発生する肺野型(末梢型)に分けられます。前者は扁平上皮がんや小細胞がんが多く、比較的症状が出やすく、後者は腺がんが多く、検診発見例の大半を占めます。

肺がんの分類

組織分類多く発生する場所特徴
非小細胞肺がん 腺がん 肺野部 女性の肺がんで多い
症状が出にくい
扁平上皮がん 肺門部 喫煙との関連が大きい
大細胞がん 肺門部 増殖が速い
小細胞肺がん 小細胞がん 肺門部 喫煙との関連が大きい
転移しやすい

※出典:国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報サービス「肺がん」より抜粋、一部改変

肺がんの症状

ほとんど症状が無く、検診で発見される場合もあります。しかしその場合でもかなり進行していたり、転移をきたしていたりすることもあり、必ずしも早期といえないこともあります。よくみられる症状としては、がんこなせき、血の混じったたん、胸の痛みなどの呼吸器症状のほかに、発熱、食欲がない、からだがだるい、声がかれるなどの呼吸器以外の症状であらわれることもあります。

診断方法・検査

肺がんは、検診等で偶然撮影した、あるいは何か症状があって撮影した胸部X線写真やCTで異常陰影が認められ疑われることが多く、肺がんの検査には、胸部異常影が肺がんであるかどうかの確定診断のための検査と、肺がんの病期(広がり)を決定し治療方針を決めるための検査があります。

確定診断のための検査:確定診断には組織診断、細胞診断(病変の一部分を採取し、顕微鏡にて組織、細胞検査を行うこと)が必要です。

喀痰細胞診

喀痰細胞診でがん細胞が検出されれば、肺がんの可能性が非常に高いと判断しますが、必ずしもすべての肺がんで検出される訳ではありません。

気管支鏡

直径4~6mmの細い管(気管支鏡)を口からのどを経て直接気管支の中に挿入する検査です。気管・気管支の表面を観察するとともに、気管支から痰や、肺を水で洗ったものを採取しその細胞診を行ったり、X線透視を併用し、末梢の肺から鉗子という小さなはさみを使って組織の一部を採取します。

経皮生検

X線透視、CT、超音波装置などを利用して体の中を見ながら、病気と思われる場所に体の表面から細い針を刺して、細胞、組織を採取します。

胸水細胞診

胸水がたまっている場合、胸腔穿刺にて胸水を採取し、細胞診を行います。
肺がんの存在を疑ったり、また、その病期(広がり)を決定し治療方針を決めるための検査です。

胸部X線

肺がんが疑われる際に最初に行われる検査です。異常陰影が認められたら、まずは、肺がんの可能性を考え、詳しく調べていくこととなります。しかし、厚みのある体を1枚の写真の上に写すことになるので、血管や肋骨などが重なり、異常陰影があるように見えたり、逆に、ほかの影にかくれてわかりにくい場合もあります。

胸部CT

肺がんが疑われる患者さんには必ずといっていいほど撮影します。体を輪切りにした状態を画像にすることができ、小さな異常も見つけることができます。その陰影がスピクラ (spicula) 、胸膜陥入像、ノッチを伴う場合、肺がんの可能性を疑います。肺門・縦隔リンパ節への進行の有無、心臓、大動脈、胸椎などへの浸潤や、胸水の有無など肺がんの病期決定に有用です。

MRI

X線被爆が無く、人体を構成する組織をある程度区別して画像にできる検査ですが、動きに弱く、肺の検査としては、呼吸の影響が出てしまい役割は限られています。脳や、骨への広がり(転移)の有無を調べ、病期決定に用います。

PET/CT

核種で標識したブドウ糖を点滴静注し (18FDG-PET)、その取り込みの分布をみることで異常陰影ががんかどうか、リンパ節および全身に転移がないかどうかを調べる検査です。病期診断に用います。


肺がんが疑われた場合には、上記のような痰の細胞診検査や胸部X線写真はもとより、CTやMRI、PET/CT、気管支鏡などを駆使し、詳しく調べていくことになります。

病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいいます。病期には、ローマ数字が使われ、肺がんでは0期、Ⅰ期(ⅠA、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB)、Ⅳ期に分類されています。病期は、がんの大きさ、がんがどこまで広がっているか(T因子:原発腫瘍)、リンパ節転移があるかどうか(N因子:所属リンパ節転移)、別の臓器へ転移(M因子:遠隔転移)があるかどうかで決まります。数字が大きいほど、進行している評価になります。

肺がんのT因子と病期(UICC第7版より抜粋)

T因子

T1a 腫瘍の最大径が2cm以下
T1b 腫瘍の最大径が2cmを越え3cm以下
T2a 腫瘍の最大径が3cmを越え5cm以下、あるいは3cm以下で臓側胸膜に浸潤がある
T2b 腫瘍の最大径が5cmを越え7cm以下
T3 腫瘍の最大径が7cmを越え、胸壁・胸膜・横隔膜・心膜などに広がっている
または主気管支への広がりが気管分岐部から2cm未満
T4 縦隔・心臓・大血管、気管などへの広がりがある

病期

リンパ節への転移がない気管支周囲、肺門リンパ節に転移がある縦隔のリンパ節に転移がある反対側の肺のリンパ節や首の付け根のリンパ節に転移がある肺の中の別の場所、胸膜播種、悪性胸水や、脳、肝臓、副腎、骨などへ転移がある
T1a,T1b ⅠA ⅡA ⅢA ⅢB
T2a ⅠB ⅡA ⅢA ⅢB
T2b ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB
T3 A ⅢA ⅢA ⅢB
T4 ⅢA ⅢA ⅢB ⅢB

治療

詳しい検査の後、肺がんと診断がつくと、その組織型や、病期(広がり)が、全身の状態、年齢、心臓や肺の機能などが治療方針の決定に重要です。手術・化学療法・放射線治療などの積極的治療が可能かどうか、呼吸器内科医、外科医、放射線科医、病理医が集まり慎重に検討いたします。

肺がんの臨床病期と治療

病期非小細胞肺がん
ⅠA期 手術 放射線治療
ⅠB期 手術 放射線治療
ⅡA期 手術 放射線治療
ⅡB期 手術 放射線治療
ⅢA期 手術 化学療法+放射線治療 放射線治療
ⅢB期 化学療法±放射線治療 化学療法 放射線治療
Ⅳ期 化学療法
再発例 化学療法
進行度小細胞肺がん
Ⅰ期 手術+化学療法
限局型 化学療法+放射線治療
進展型 化学療法
再発例 化学療法

手術(外科的治療)

肺がんの場合、手術による治療は、主に病期ⅠとⅡ期および一部のⅢA期が適応となります。

  • ⅠB期、Ⅱ期やⅢA期の場合は、手術後に化学療法を行うことがあります。
  • 進行肺がんは手術だけでは治療効果が得られないことがあります。このような場合は、 呼吸器内科・放射線科において、化学療法や放射線療法を組み合わせた「集学的治療」 を施行しています。
  • 近年、PET/CTなどの進歩により早期の小型肺がんが発見される機会が増えています。
    気管支鏡生検では悪性所見を確定できなかったがPETで異常集積を認めるという早期肺がん疑いの場合は、胸腔鏡による生検を施行して手術中に診断します。その結果、肺がんと診断されましたら引き続き区域切除・葉切除・部分切除等を施行しています。

化学療法

新しい世代の抗がん剤の登場や臨床試験による治療法の研究により、進行し手術不能の肺がんの治療成績も改善しています。肺癌診療ガイドライン、NCCNガイドライン肺がん版等各種ガイドラインを参考に、各々の患者さまの組織型、病期のみならず、患者さまの有する合併症、体調、治療に対する希望により個々の患者さまに適したオーダーメイドに近い治療を行っていきます。

小細胞肺がんの化学療法

小細胞肺がんに対しては、シスプラチンまたはカルボプラチン(パラプラチン)とエトポシド(ラステット)の組み合わせが標準的治療として長い間施行されてきました。現在でも、この2剤の併用は今でも標準的治療の一つとして広く行われており、放射線治療と同時併用して行います。また、他の臓器に転移を認める小細胞肺がんの場合、塩酸イリノテカン(トポテシン、カンプト)をシスプラチンと併用する化学療法を行う場合もあります。また、治療後の再発の場合などで、アムルビシン(カルセド)も単独で高い奏効率を示しています。

非小細胞肺がんの化学療法

ビノルビン(ナベルビン)、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、ゲムシタビン(ジェムザール)、塩酸イリノテカン等の新世代の抗がん剤が登場し、これらをプラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン)と併用することにより治療成績が改善しました。また、さらに新しい抗がん剤のペメトレキセド(アリムタ)や分子標的薬の一つであるベバシズマブ(アバスチン)などは、非小細胞肺がんのうちでも扁平上皮がん以外の組織型の肺がんで有効性が示されており、肺がんの組織型の確定診断が重要になってきています。

これら新世代の抗がん剤は、単独で用いても従来の併用療法に匹敵する効果を有しており、高齢者や、一度抗がん剤治療を受けて再発した患者さんの治療に用いられて有益であることが証明されています。

胸郭内の局所の治療効果を上げるために、化学療法と放射線治療を同時に行う方法もあります。しかし、放射線胸部照射の副作用である放射線肺像炎が化学療法により増悪するため、プラチナ製剤と組み合わせる抗がん剤には、新世代の抗がん剤であるビノルビン、パクリタキセルが選択されます。

がん細胞に特定の遺伝子の異常(遺伝子変異、融合遺伝子)が認められた場合、分子標的薬が著効を示す場合があります。

上皮由来成長因子(EGFR)遺伝子変異-ゲフイチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ) 未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子-クリゾチニブ(製造販売承認済み、ザーコリ)

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