肝がんによる死亡者数は増え続けており、厚生労働省の調査によると、日本では1年間に約3万5000人が亡くなっています。肝がんには肝臓から発生した「原発性肝がん」とほかの臓器のがんから転移した「転移性肝がん」があります。わが国では原発性肝がんのほとんどが肝炎ウイルスをもとに起こっているという特徴があります。約72%がC型肝炎ウイルスに感染している人からの発症です。B型肝炎ウイルスに感染している人からの発症もあわせると、全体の90%を占めます。通常、肝がんは慢性肝炎から肝硬変を経て発症します。しかし最近は、肝硬変を経ずに、慢性肝炎から肝がんが発生するケースも増えています。肝がん自体による自覚症状は、ほとんどありません。また脂肪肝をもとにして起こる「NASH」、お酒を多く飲む人にも発がんする可能性があります。
肝がんの治療には様々なものがあり、腫瘍の広がりと肝予備能、その他に年齢や全身状態などを総合して、ガイドライン(表1)に沿って治療法を選択します。肝がんの患者さんはもともと慢性肝炎や肝硬変といった背景を有することが多く、治療方針の決定においては肝予備能(肝臓の機能がどの程度保たれているか)を十分考慮する必要があります。肝予備能の評価法には、“肝障害度”、“Child-Pugh分類”などといった基準があり、患者さんがどの程度の治療に耐えられるかという肝臓の予備能力の指標となります。具体的には、腹水の有無、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、ICG検査、プロトロンビン活性値、脳症の有無などを組み合わせて規定されます。肝予備能の低い患者さんでは治療の負担に肝臓が耐えられないこともあり、肝がんの治療を行わない方がかえって長生きができる場合もあり、治療方針を決める上で肝予備能の評価は非常に重要です。
※肝癌治療ガイドライン:科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班/編より抜粋
当院で行っている治療法は以下の通りです。
外科的に腫瘍を含めた肝臓を切除します。腫瘍の広がりと肝予備能、その他に年齢や全身状態を考慮して、切除範囲を決定します。以前では手術の適応とならなかった肝硬変などの肝予備能の低下した患者さんに対しても、低侵襲な腹腔鏡下(もしくは補助下)の肝切除を導入しており、手術の対象となる患者さんが増えています。
超音波(エコー)やCTなどで位置を確認しながら治療用の針(電極針)で経皮的に腫瘍を穿刺し、AMラジオの波長よりやや長い波長の高周波を当てて、熱凝固によりがんを焼灼します。約1週間の入院です。同様の経皮的治療ではマイクロ波凝固療法もありますが、近年ではラジオ波焼灼療法が最も多く行われています。
超音波(エコー)で腫瘍の位置を確認しながら純度100%のエタノールを腫瘍に注入し、がんを壊死させます。約1週間の入院です。
カテーテルとよばれる細い管を使って血管造影を行いながら、腫瘍を栄養している血管を確認し、抗がん剤をリピオドールという造影剤の一種と混ぜたものを注入した後、ゼラチン粒という塞栓剤で栄養血管をつめることによりがん細胞を壊死させます。比較的幅広い対象の患者さまに治療が可能ですが、門脈という肝臓の血管が腫瘍によって閉塞していたり肝予備能が極端に低かったりすると対象となりません。約1週間の入院です。
肝動脈にカテーテルを用いて直接抗がん剤を流す肝動注化学療法と、全身化学療法(内服薬や静脈内投与により全身に抗がん剤をいきわたらせる)があります。2009年5月より、肝がんに対して唯一延命効果が証明された抗がん剤であるソラフェニブ(ネクサバール)が国内で使用可能となりました。
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