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食道がん

食道の基本知識

食道は、咽頭(のど仏辺り)と胃(みぞおちの上辺り)をつなぐ細長い管状の臓器です。場所によって、口側から、頸部食道、胸部食道、腹部食道に分けられます。
食道の壁は約4mmです。内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4つの層に分かれています。内側にある粘膜の表面は、扁平上皮と呼ばれる上皮で覆われています。
食物を飲み込むと、食道の壁が動いて食べ物を胃に送り込みます。

食道がんの疫学

食道がんは、日本のがん死亡の第6位で、年間死亡数は約1万1千人です(2004年)。
男性に圧倒的に多く、40歳代後半以降に増加します。
食道がんは、そのほとんどが、粘膜の表面にある上皮から発生します。日本人の食道がんの90%以上が扁平上皮がんです。
これに対して、欧米では胃の近くに発生しやすい腺がんが過半数を占めます。
食生活の欧米化により、日本でも腺がんは増加傾向です。
その他、食道にできる稀ながんとして、小細胞がん、がん肉腫、悪性黒色腫などがあり、粘膜以外から発生する消化管間葉系腫瘍もあります。

食道がんの発生

食道粘膜を覆う上皮から発生したがんは、大きくなるにつれて粘膜下層、固有筋層、外膜へと深く進展していきます。さらにがんの進展が進むと、隣接する気管や肺、大動脈、心臓に浸潤していきます。
また食道周辺にはリンパ管や血管が多いので、転移の可能性を常に考慮する必要があります。がんが深く進展するほど、リンパ節転移の確率が高くなります。リンパ節以外にも、血液の流れに乗って、肝臓や肺などの他臓器にも転移していきます。

食道がんの発生誘因の代表としては、喫煙と飲酒が挙げられます。
また、熱い飲食物や塩分が食道がんのリスクとしてあげられています。
腺がんについては、胃酸の食道への刺激が誘因とされています。
また咽頭がん(喉のがん)も扁平上皮がんであり、食道がんとの関連が指摘されています。

食道がんの症状

食道がんは、病状がある程度進行するまでは、基本的に無症状です。
健診や、腹痛精査時の内視鏡検査(胃カメラ)などで発見される自覚症状のない食道がんは、早期がんであることが多く、治癒率は高くなります。また、食事摂取時のしみるような胸部症状は、がん初期のころにもみられることがあります。
がんが進行して食道が狭窄すると、食べ物が食道や喉につかえる症状が出現します。
一方、がんが食道の壁外に広がり、肺や背骨、大動脈の方へ広がると、胸痛や背部痛が出現します。気管や肺へ広がると、咳や血痰が出ます。
また、食道のすぐ傍の神経を巻き込むと、嗄声(させい)と呼ばれる、声がかすれる症状が出現します。 この他、がんの一般的な症状としては、急激な体重減少(3ヶ月間に5kg程度)、発熱(午後に熱がでやすくなります)、易疲労感などがあります。

診断方法

食道がんの存在診断

食道がんの存在診断には、バリウムなどの造影剤をつかったレントゲン検査である食道造影検査や、内視鏡検査(胃カメラ検査)が有用です。

食道造影検査

がんの位置を把握するために有用です。胃がん健診などとあわせて広く一般に行われている検査です。

内視鏡検査

肉眼でがんを見て、組織をとって病理組織検査(顕微鏡検査)で診断をつけるために、必須の検査となります。最新鋭の内視鏡機器と、内視鏡学の進歩により、自覚症状のない、また食道造影検査では指摘できないような早期がんの指摘が可能になりました。

転移の程度を判断するための検査

がんの進行度、特に転移の程度を判断するための検査としては、(造影)CT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査、PET-CT検査などがあります。

CT検査

CT(コンピューター断層撮影)検査は身体の内部を輪切りにしたX線写真です。がん周囲のリンパ節や、大動脈、肺、心臓、背骨、さらには肝臓等への浸潤・転移を調べる上で最も有用な検査です。この検査で、がんの進行度(ステージ)を判定します。

超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査は、食道壁に内視鏡スコープを用いて超音波をあてることで、上皮から発生したがんがどの程度深く進展(粘膜下層や筋層、さらには周辺臓器)しているかをみる検査です。がんの深達度を判定する上で有用です。

PET-CT検査

PET-CT検査(陽電子放射断層撮影検査)は、放射性ブドウ糖を用いて全身の悪性腫瘍細胞を検出する検査です。がんの転移や進行度判定に役立ちます。

その他

この他、血液検査で腫瘍マーカーを見ることがあります。腫瘍マーカーは進行がんの動態把握のために用いられます。早期がんでは上昇はありませんし、進行がんでも上昇がみられないこともあるため、がんのスクリーニングには適していません。扁平上皮がんでは「SCC」や「CEA」、腺がんでは「CEA」が有用な腫瘍マーカーとなります。

食道がんの進行度(ステージ)

一般に、がんは進行度(病期)に応じて治療法が変わります。
進行度をステージとして表現し、通常、0期からⅣ期に分けられます。
0期が一番初期で、Ⅳ期が最も進行が進んだ状態です。

食道がんの進行度分類としては、国際的な分類としてUICC(国際対がん連合)のTNM分類が有名で、わが国ではこの他に、日本食道学会の「食道癌取扱い規約」があります。検査で得られた情報をもとに、T:深達度(原発巣の深さ(大きさ))、N:リンパ節転移の有無、M:遠隔転移の有無の3つで、進行度を決定します。 以下にUICCのTNM分類を示します。

食道がんのTNM分類(UICC)

T:腫瘍深達度
Tis-T1 粘膜・粘膜下層にとどまる
T2 筋層までの浸潤
T3 外膜までの浸潤
T4 外膜を超えて周囲臓器に浸潤
N:リンパ節
N0 リンパ節転移なし
N1 リンパ節転移あり
M:遠隔転移
M0 遠隔転移あり
M1 M1a 所属外リンパ節転移あり
M1b 遠隔転移あり

食道がんのステージ(UICC)と標準治療
TNMステージ手術適応非手術治療
Tis 0 0 ステージ0 内視鏡治療 化学放射線療法
1 0 0 ステージI 内視鏡治療
手術療法
2 0 0 ステージIIA (術前化学療法)

手術療法
化学放射線療法
3 0 0
1 1 0 ステージIIB
2 1 0
3 1 0 ステージIII(T3の場合)
4 0か1 0 ステージIII(T4の場合) 適応なし 化学放射線療法
1~4 0か1 M1a ステージIVA
1~4 0か1 M1b ステージIVB 適応なし 化学放射線療法

食道がんの治療

がんの進行度(ステージ)と全身状態を判断して治療方針を決定します。

食道がん治療には、内視鏡治療、手術療法、化学療法(抗がん剤)、放射線療法があります。
内視鏡治療は、早期がんのみに適応があります。
進行がんでは、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせた治療も行います。

内視鏡治療

食道壁の粘膜下層までにとどまる「表在型」のがんのうち、リンパ節転移のない食道がんを早期食道がんと定義します。内視鏡治療は、早期食道がんを、内視鏡で見ながら食道の内側から切り取ります。がんが粘膜下層を超えて進展してしまうと、取り残しができるので、治療対象となりません。また、リンパ節も内視鏡ではとることができないので、リンパ節転移があると対象から外れます。

内視鏡治療には、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、内視鏡的粘膜剥離切開術(ESD)があります。
内視鏡治療の一番のメリットは、体への侵襲が少なく、食道そのものを残すことができる点です。手術加療と比して入院期間は短く、治療後も治療前と同様の生活ができます。
ただし、広範囲に粘膜を切り取った場合、食道が狭窄(内腔が狭くなる)する場合があります。これによる食べ物の通過障害が顕著な場合は、内視鏡を用いた食道拡張術が必要になります。また、切除した組織の病理組織検査(顕微鏡検査)で、治療前診断よりもがんが進行していた場合は、がんの体内の残存を考慮して、追加の外科手術や放射線治療、化学療法が必要になります。
また、内視鏡治療そのものについても、手術加療の範疇を超えませんので、頻度は稀ですが合併症があります。

手術(外科的治療)

手術は最も一般的な食道がんに対する治療法で、病変を含めて食道を切除します。リンパ節を含む周囲の組織を同時に切除します(リンパ節郭清)。食道を切除した後には食物の通る経路を他の消化管を用いて再建します。食道は頸部・胸部・腹部にわたり、病変の局在がそれぞれの部位によったがんの進展形態を示すため、選択される手術術式は異なります。

頸部食道がん

病変が小さく頸部食道にとどまり、周囲へ広がりもない場合には、のどから胸までの頸部食道のみを切除します。切除したあとには小腸の一部(約10cm)を移植して再建します。この際、移植腸管の血管を頸部の血管につなぎ合わせる必要があります。のどの近くまで及ぶ病変では頸部食道とともに喉頭を切除し、小腸の一部を咽頭と胸部食道の間に移植します。そして気管の孔を首の最下端中央にあけます。喉頭を切除するため声は出せなくなります。

胸部食道がん

原則的に全域の胸部食道を切除し、同時に胸部のリンパ節を切除します。食道は胸の中(縦隔)を通っているため、切除するためには右側の胸を開く必要があります(開胸操作)。これが大きな負担になるため、最近では胸腔鏡を使って開胸せずに食道を切除する方法が行われ、その低侵襲性(負担が少ないこと)が評価されつつありますが、治療効果については検討段階です。開胸を行わずに頸部と腹部を切開し食道を引き抜く術式(食道抜去術)は、主に早期の病変に対し行われてきましたが、この術式では食道の周囲のリンパ節の切除ができません。

食道を切除したあとには、胃を引き上げて残っている口側の食道とつないで再建します。胃が使えない場合は大腸または小腸を用いて再建します。胃や大腸・小腸を引き上げる経路には、前胸部の皮膚の下を通す経路・胸骨の下で心臓の前を通す経路・元来の食道があった経路の3通りがあり、それぞれの病変の病態により選択されます。

腹部食道がん

腹部食道のがんに対しては、左側を開胸して食道の下部と胃の噴門部を切除します。左側の開胸による手術は胸部・下部食道がんで肺機能の悪い人にも行われます。

バイパス手術

根治をあきらめ、一時的にでも食事をできるようにすることによりQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の改善をめざす方法として、病変のある食道をそのまま残し胃を頸部まで引き上げ、頸部で頸部食道とつないで食物の経路を別につくる手術です。最近では、これに代わって食道内挿管法(ステント)が行われます。

外科療法の合併症

手術に続いて発生する合併症は肺炎、縫合不全(つなぎめのほころび)、肝・腎・心不全です。これらの合併症により死亡する率、すなわち手術死亡率(手術後1ヵ月以内に死亡する割合)は2~3%です。手術前より重要臓器の障害や糖尿病などの全身疾患をもっている人では、これらの発生率は高くなります。

化学療法(抗がん剤治療)

化学療法(抗がん剤治療)は、全身のがん細胞を殺すための薬です。
点滴薬や内服薬等、様々な抗がん剤がありますが、食道がんにおいては、現在、フルオロウラシル(5-FU)とシスプラチンの併用療法が最も有効とされています。ともに点滴薬で、約5日間継続して点滴治療が行いますので、原則として入院加療が必要です。点滴終了後は、3週間ほどの休薬期間がありますので、副作用などの問題がなければ退院していただき、入退院を繰り返しながら、治療を続けていくことになります。
効果がない場合は別の抗がん剤への切り替えを考慮します。

抗がん剤には副作用が付きものです。命に関わるリスクは、1~2%前後といわれています。副作用の自覚症状としては、吐き気・嘔吐・食欲不振、倦怠感、粘膜炎(口内炎、食道炎、下痢など)、色素沈着・皮疹・脱毛、神経障害(しびれ、難聴、脳症など)、アレルギーなどがあります。また、血液検査上は、白血球の低下(→抵抗力の低下による感染リスクの上昇)、赤血球の低下(→貧血)、血小板の低下(→血が止まりにくくなる)、肝機能障害、腎機能障害等があります。特に、シスプラチンは腎臓に負担を与えやすいので、大量の点滴で尿をたくさん出すことで腎臓を守る必要があります。
食道がんの抗がん剤治療は、単独で抗がん剤を使用する以外に、放射線との併用療法、手術との併用療法(多くの場合、手術前に2回投与)があります。

放射線療法

放射線療法は、がんに対して高エネルギー放射線を当ててがんを殺す治療です。基本的に、手術と同様に局所の病変のみに適応があります。メリットは、食道の機能や形態を温存できる点にあります。化学療法との併用でより効果が高くなることがわかっていますが、年齢などで臓器機能が低下している場合や患者様の状態が悪い場合には、放射線療法を単独で行います。

放射線療法の目的としては、がんの治癒をめざす根治療法と、疼痛や出血などの症状を抑えるための姑息的治療、対症療法に分けられます。放射線照射方法としては、放射線を身体の外から照射する外照射と、食道内に器具を挿入して照射する腔内照射があります。 副作用としては、嚥下時の違和感・疼痛・咽頭の乾き・声のかすれ、胸腹部の不快感や気分不良・食思不振などの自覚症状の他、皮膚炎、食道炎、肺臓炎、心臓炎や治療が終了して数ヶ月から数年たって出現する肺臓炎、心のう液貯留(心臓周囲に水が溜まる)、胸水貯留等があります。

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化学放射線療法

化学療法と放射線療法を同時並行で治療(化学放射線療法)すると、放射線治療単独よりも効果に期待がもてます。
目的によって、根治的化学放射線療法と、緩和的化学放射線療法に分けられます。根治的化学放射線療法は、治癒を目指す治療です。病変がすべて放射線照射野に入る場合で、手術を希望されない人、手術リスクの高い人や、がんの進展が大きく手術できない場合が対象です。これに対して、緩和的化学放射線療法は、「食道内腔の狭窄で食事摂取が困難な場合に狭窄症状を和らげる目的」など、全身への転移で根治的な治療は難しいものの、局所的な治療効果により患者さんに利益があると判断される場合に行います。
副作用としては、化学療法、放射線療法それぞれのものに留意する必要があります。

その他

がんによる食道狭窄のために食事摂取が困難な場合や、食道に穴があいて肺炎などを起こす場合には、食道の内腔を裏打ちする形で、ステントと呼ばれる管を留置して、食事摂取を目指します。内視鏡を用いて行います。根本的な治療法ではありませんが、食事摂取という生活の質の向上のためには有益な治療です。

食道がんの再発

手術加療でがんをすべて取り除いたり、化学放射線治療後のCTでがんがすべて消えたように見えても、目に見えない形でがん細胞が残っていれば、再発します。

再発は、がんの一般的な症状以外に、転移部分の症状でわかることがあります。転移での再発部はリンパ節や肺、肝臓、骨などが多数を占めます。転移部分の病巣がある程度の大きさになるまでは、自覚症状に乏しいことがほとんどです。リンパ節転移は、鎖骨部分などの体表面のリンパ節の腫大、嗄声(声がかすれる)や、転移部分の違和感でわかることがあります。肺転移では難治性の咳や血痰、胸痛などの症状が、肝臓転移では腹部膨隆や体のむくみ等の症状がでます。骨転移では痛みを感じます。
再発の場合に手術加療を行えることは稀で、再発部位、自覚症状、初回治療法などを考慮して、化学療法や放射線療法、あるいは症状緩和のための治療を行います。
残念ながら、再発食道がんの完治は、世界的にみても稀なことと言わざるを得ません。

当院からのメッセージ

がんは、早期発見・早期治療が原則です。発見が遅くなり、がんが進行すればするほど、命に関わる可能性が高くなるからです。

当院では、最新の内視鏡機器を用いて、各診療科同士で連携しながら、消化器がんの早期発見・早期治療に努めています。気になる症状があれば、お気軽にご受診・ご相談ください。

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