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小児脳腫瘍

はじめに

脳腫瘍は成人に多い病気であり、脳腫瘍の中で15歳未満の小児が占める割合は約8%にすぎません。しかしながら、小児に発生する腫瘍のうち脳腫瘍は白血病に次いで第二位の頻度であり、さらに死亡率は第一位となっており、決して珍しい病気ではありません。重い後遺症を残すこともあり、早期に診断してしっかりと治療を行う必要があります。
小児脳腫瘍の原因は残念ながら不明です。原因遺伝子が一部判明しているものや家族内発生を示す場合もありますが、大多数は原因がわかっていません。

小児脳腫瘍の症状

脳は頭蓋骨に囲まれているため、脳腫瘍ができると頭蓋内の圧が高くなり頭痛や嘔吐、意識障害などの頭蓋内圧亢進症状が現れます。ところが、乳幼児期には頭蓋骨縫合や大泉門が開存しているため、ある程度の大きさの腫瘍があっても自然に減圧され、すぐには症状が現れないという特徴があります。発見された時には腫瘍が非常に大きくなっていることもしばしばあります。これらの症状が進行すれば高度の意識障害を呈し、最悪の場合には呼吸停止から死にいたります。

また、腫瘍のできる場所によっては、脳脊髄液の循環が妨げられ水頭症という状態になります。通常は循環し吸収されている脳脊髄液がうっ滞して、脳室という部位が拡大します。脳腫瘍によって頭蓋内の圧が高いところに水頭症が加わり、急速に頭蓋内圧亢進症状が出現し病状が悪化する場合が多く見受けられます。

一方、腫瘍が発生した部位に応じた神経症状を呈することもあります。具体的には運動麻痺や言語障害、眼球運動障害、顔面神経麻痺、小脳失調、けいれん発作などです。

小児脳腫瘍の診断

頭囲拡大や神経症状などの身体所見に加え、CTやMRIなどの画像検査を行い診断します。造影剤を用いたCT・MRIや核医学検査、脳血管撮影などを必要に応じて追加します。最終的には、手術で摘出した組織の病理検査を行い確定診断となります。

小児脳腫瘍の種類

脳腫瘍は数多くの種類に分類されていますが、小児で頻度の高い脳腫瘍は、星細胞腫、髄芽腫、上衣腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫、脈絡叢乳頭腫といわれるタイプの腫瘍です。悪性度の高い腫瘍が比較的多く、治療が困難なものや治療期間が長期にわたるものが多いのも事実です。

発症年齢はさまざまですが、腫瘍が胎内で発生し生後数カ月以内に診断される場合もあります。

小児脳腫瘍の治療

小児脳腫瘍は、脳幹や視床下部など生命維持に関わる部位やその近辺に発生することが多いという特徴があります。まずは手術でできる限り摘出することになりますが、重要な部位に存在するがゆえ手術による摘出には限界があります。当院では、ニューロナビゲーションや神経内視鏡、神経機能モニタリングなどを駆使して安全かつ確実な手術を心がけています。

また、多くの腫瘍で放射線治療や化学療法の追加が必要になります。放射線治療は有効な治療方法ですが、脳組織の発育が障害されるという問題があり主に3歳以降で実施しています。化学療法が効果的な場合もあり、放射線治療と併用します。大量化学療法により放射線照射量を減量させることも可能になってきていますが、強力な薬剤であるため様々な副作用を生じる可能性があります。

合併症として水頭症をきたした場合には、腫瘍の治療とは別に水頭症に対して治療が必要となります(脳室腹腔シャント術や内視鏡的第Ⅲ脳室底開窓術)。

代表的な脳腫瘍

小児で頻度の高い脳腫瘍について簡単に説明します。

星細胞腫

神経細胞を支える役割の神経膠細胞(グリア細胞)の一種である星細胞から発生する腫瘍です。大脳に生じた場合には運動麻痺やけいれん発作など発生部位に応じた症状がみられます。小脳にできた場合は、ふらつきなどの小脳失調に加えて水頭症による頭蓋内圧亢進症状が現れることがあります。

良性の性格を持つことが多く、大脳や小脳に生じた腫瘍では全摘出することで完治が望めます。しかしながら、脳幹や視床、視神経などに発生した場合には手術が困難であり、放射線治療や化学療法を行なっても予後は不良です。また、悪性度の高いがんも稀にあり、このような場合も放射線治療や化学療法を行いますが残念ながら治療成績は良くありません。

髄芽腫

小児における代表的な脳腫瘍であり、ほとんどが小脳に発生します。ふらつきなどの小脳失調に加えて水頭症による頭蓋内圧亢進症状が現れることがあります。

以前は治癒困難な脳腫瘍と考えられていましたが、手術手技の向上や放射線治療・化学療法の進歩によって治療成績は確実に向上しています。手術でできる限り腫瘍を摘出し、全脳全脊髄への放射線照射と化学療法を追加することが標準治療となっています。

上衣腫

星細胞腫と同じく、神経膠細胞(グリア細胞)の一種である上衣細胞から発生する腫瘍です。小脳に好発する腫瘍であり、髄芽腫と同様に小脳失調や頭蓋内圧亢進症状がみられます。

まず手術でできる限り腫瘍を摘出し、多くの場合放射線治療と化学療法を追加します。

胚細胞腫瘍

生殖器に発生するものと類似の腫瘍が脳内にも発生することが知られています。比較的良性の性格を持つ胚腫や奇形腫、悪性度の高い絨毛がんや卵黄嚢腫瘍など様々なタイプに分類されており、これらをまとめて胚細胞腫瘍といいます。

治療方法は各タイプによって異なりますが、基本は手術と放射線治療・化学療法です。

頭蓋咽頭腫

胎生期の遺残組織から発生すると考えられている腫瘍です。脳の中心部である視床下部から下垂体の近辺に発生します。

手術でできる限り摘出することが重要ですが、再発率の高い腫瘍でありしばしば再手術や放射線治療が必要となります。

脈絡叢乳頭腫

脈絡叢とは脳脊髄液を産生する組織であり、脳脊髄液が流れている脳室という部分に存在しています。ここから発生する腫瘍であり、脳脊髄液が過剰に作られて水頭症となります。

治療の基本は手術による摘出です。

最後に

予後とは病気の回復や見込みを意味する言葉であり、脳腫瘍でも予後良好なものから予後不良なものまで色々とあります。一口に脳腫瘍と言っても、腫瘍の種類や発生部位はさまざまであり、同じ種類の腫瘍でも悪性度が異なる場合があります。年齢によっても治療成績は異なりますし、患児によって体力や免疫力も違います。

大事なことは、担当の医師から納得のいく説明を受け、お子さんの病状や治療方針をしっかりと理解して治療を受けることです。治療や通院が長期にわたることも多いため、担当の医師や看護師と信頼関係を築くことが重要です。わからないことがあれば気兼ねなく医師や看護師に質問してください。

お子さんとご両親、そしてわれわれ医療スタッフにとっても脳腫瘍は手ごわい敵です。
一緒に立ち向かって病気を克服し、お子さんたちが元気に暮らせるよう努力していきます。

一緒に立ち向かって克服できるよう、そしてお子さんたちが元気に暮らせるよう、われわれも日々がんばっています。

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