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見えない力で命を救う:救急医療と放射線検査

2025.03.19

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放射線技師 中山 喬資

皆様は救急外来で受ける検査と言えばどのような検査を思い浮かべられますか。

血液検査や心電図、超音波検査など様々な検査が行われています。今回はその中でも放射線科が行う検査についてご紹介させていただきます。



一般撮影(レントゲン)、CT、MRI検査

一般撮影

一方向からX線を照射して平面画像(2D)を得ます。
骨折や腹部のガス異常、胸部の炎症や腫瘍などの状態を確認するのに適しています。
一般撮影は短時間で行えるのが利点ですが、詳細な情報を得るには他の検査が必要になる事もあります。

CT

X線を使用し、いろいろな方向から体にX線をあてる事により体の断面像を撮影します。
検査時間も5~15分と早く、緊急性のある症状の評価や内臓・骨などの状態をよく観察できますが、
一般撮影に比べて放射線被ばくのリスクが高くなります。
CTは、脳出血・肺炎・肺がん・血管病変・石灰化(胆石や腎結石など)が得意分野です。

MRI

強力な磁石と電波を利用して脳や筋肉、骨の詳細な組織を撮影し、CTと同様に体の多断面像を見ることが可能です。
一般撮影、CTと異なりX線を使用しないため放射線被ばくがありません。
但し、体の動きに弱く検査時間が20~40分と長いため、長時間の静止をお願いする検査です。
MRIは、脳梗塞・脳腫瘍・靭帯・椎間板ヘルニア・骨盤部臓器(子宮、前立腺など)が得意分野です。



新CT装置導入(2024.12.16)

高槻病院ではこの度、救急撮影室に新CT装置( Canon製80列マルチスライスCT装置「Aquilion Serve」)が設置されましたので紹介させていただきます。



<新CT装置の特徴>

1.圧迫感のない撮影
開口部が800mm(従来720mm)と大きな構造のため、圧迫感がなくリラックスして検査を受けていただけます。
また、病態によって動きが制限される患者様においてもより安全な検査が可能になりました。


2.放射線被ばく低減
AI技術の一つである深層学習(Deep Learning)を用いた画像再構成技術により、従来に比べ放射線被ばくが40%低減されるうえに、ノイズの少ない高品質な画像の撮影が出来るようになりました。
画質が向上することにより、小さな病変の発見やより正確な診断が可能になります。


3.撮影時間の高速化
X線検出器の増加と撮影速度の高速化により、画像のブレによるリスクが低減し安定した画像取得ができます。
その為、息を止めていただく事が難しい救急の患者様にも安心して検査を受けていただけます。


4.画像提供時間の高速化
撮影後から画像を提供できるまでの時間が、従来と比べて最大5分の1に短縮化されました。これは適切な治療を早急に開始することにつながります。


5.体内金属による影響の低減
新装置は体内金属(人工関節など)による画像の歪みの影響を低減させる機能があり、従来診断し辛く隠れてしまっていた病変も、この機能により見逃すことなく検査が可能となります。


救急医療は「医の原点」

人の命が分刻みで揺れ動く救急医療の場で、患者様に最初に差し伸べられる手が、医師・看護師・臨床工学技士・薬剤師・臨床検査技師など様々な職種によるチームの力です。
その中で、診療放射線技師は患者様に適切な治療を早急に受けていただく為に一刻も早く正確な画像を提供する責務があります。今回のCT装置更新もその一環であり、装置のみではなくそれを扱う診療放射線技師の知識・技術も日々更新しています。
しかし、その中心にあるのは、患者様の苦しみを和らげ、命をつなぐという普遍的な使命です。
高槻病院の理念である「患者様の満足する医療」を提供すべく、救急医療体制の強化を通じて安全・安心な先端医療で地域の皆様の健康を支えてまいります。